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【弁護士が解説】従業員に転勤を拒否された場合の対処法

会社の業務運営上、配置転換や転勤は避けられない場合があります。

しかし、いざ従業員に転勤を命じたところ、「家庭の事情で行けない」「転勤命令には納得できない」と拒否されてしまうケースも少なくありません。

今回は、従業員が転勤を拒否した場合に企業が取るべき正しい対処法を解説いたします。

従業員に転勤を拒否された場合の対処法

従業員に転勤を拒否された場合、主に以下の対処法が考えられます。

 

  • 命令が有効かを確認する
  • 従業員へ説明を行いつつ合意形成を目指す
  • 懲戒対応を検討する

 

それぞれ確認していきましょう。

命令が有効かを確認する

就業規則や雇用契約書に「勤務地・職務変更を命じ得る」旨の条項があるか、採用時の説明や慣行として転勤が予定されていたかをチェックします。

一方で、現地採用や特定職種といった「限定合意」がある場合は、命令が制約されることもあります。

従業員へ説明を行いつつ合意形成を目指す

転勤命令を実施する際にまず必要なのは、従業員への十分な説明と記録の確保です。

命令の理由、対象者を選んだ基準、勤務条件や通勤・転居の影響などを具体的に説明し、同時に会社として行う配慮を示しましょう。

これらのやり取りはすべて面談記録や議事メモとして残すことが重要です。

また、転勤拒否をめぐる交渉は1度で解決するものではありません。

発令時期の猶予を設けたり、短期出張から段階的に本転勤へ移行したりと、柔軟な選択肢を提示することで合意に至るケースも見られます。

健康上の理由があるときは、主治医の意見を文書で確認し、必要な配慮内容を明確化しておくとよいでしょう。

懲戒対応を検討する

それでも従業員が転勤を拒否し続ける場合、次に検討すべきは懲戒対応です。

いきなり解雇に踏み切るのは危険であり、まずは服務指導や注意、戒告など軽い処分から段階的に進めるのが原則です。

いずれの処分も、就業規則に定める手続きや弁明機会を確保しなければ無効となる可能性があります。

無断欠勤に発展した場合も、予告手当や除外認定の可否など、労働基準法の細部に留意が必要です。

解雇に至る場合は、普通解雇か懲戒解雇かの判断基準を慎重に見極め、客観的合理性と社会的相当性を欠かないようにしましょう。

まとめ

転勤拒否の場面では、命令の有効性のチェック、説明と配慮、段階的な対応の3点が基本です。

これらを怠ると、転勤命令の無効や不当解雇として訴訟に発展し、企業側に高額な賠償リスクが生じるおそれがあります。

少しでも判断に迷う場合や、従業員の個別事情が複雑な場合には、労務問題に精通した弁護士への早期相談がおすすめです。

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原 武之Takeyuki Hara

弁護士登録後から労務問題と倒産問題を中心に扱ってきましたが、どんな時にも意識するのは、受動的に対応するのではなく、主体的に積極的に対応していくことであると思っています。

問題が発生してから動くのではなく、問題発生を予見し、依頼者の方が目指す方向に向けて解決策をどこまで提示することができるか、それを常に自問して業務を行っています。

所属
  • 愛知県弁護士会
経歴
  • 兵庫県西宮市出身
  • 兵庫県私立滝川高校卒業
  • 平成12年 早稲田大学法学部卒業
  • 平成15年 弁護士登録(56期 第二東京弁護士会)
  • 森・濱田松本法律事務所入所
  • 平成18年 川上法律事務所移籍独立(愛知県弁護士会に登録換え)
  • 平成21年 川上・原法律事務所に名称変更
  • 平成29年2月 オリンピア法律事務所 パートナー

事務所概要

弁護士 原 武之(はら たけゆき)
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