不当解雇と言われない正当な解雇理由・解雇条件とは
問題行動があり社内の風紀を乱す場合、仕事の出来が著しく悪い場合、事業の経営状況が悪化した場合など、従業員を解雇したいというケースは様々に想定されます。
しかし、解雇される従業員の側からすると生活基盤を失うことになりますので、従業員を保護するために労働契約法16条は解雇に対する制限規定を置いています。
また、従業員に不当解雇だと訴えられ、その主張が認められてしまった場合、会社が大量の金銭を支払わなければならないことにもなりかねません。
正当に解雇を行うためにも、不当解雇となる条件は何なのか、不当解雇と言われない正当な解雇理由・解雇条件とはどのようなものなのか、以下見ていきましょう。
■不当解雇とは
労働契約法16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。
そして、ここにいう「客観的に合理的な理由を欠く」解雇のことを不当解雇と呼んでいます。
そして、裁判所はこの合理的な理由を多くの場合認めることがありません。したがって、実質的には原則として解雇は無効という状態になっています。
不当解雇が認められた場合、解雇時からその無効が確定するまでの給与に加えて、不当解雇に対する慰謝料も支払わなければなりません。その総額は、1000万円以上にのぼる場合も多く、従業員の解雇には多大なリスクがつきまといます。
したがって、会社としては原則として注意指導や退職勧奨など、他の手続を行うことで退職を促すことになります。それらが奏功しなかった場合、初めて解雇を検討していくことになるのです。
■正当と認められる可能性のある解雇理由・解雇条件
それでは、正当と認められ得る解雇理由・解雇条件にはどのようなものがあるのでしょうか。
これを知るためにはまず、解雇には「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3種類があることを理解しておく必要があります。
解雇の種類によって、解雇理由も変わってくるからです。以下、それぞれの解雇がどのようなものなのか、またそれぞれに認められる解雇理由・解雇条件について、詳細を見ていきましょう。
●普通解雇における解雇理由・解雇条件
普通解雇とは、労働者が労働契約の本旨に従った労務を提供しないという債務不履行があることを理由として、労働契約の解除(=解雇)を行うことを指します。
普通解雇の代表例としては、能力不足や病気による労働への支障などが挙げられます。
普通解雇の際には、手続的な規制も存在します。
具体的には、会社は解雇しようとする従業員に対し、原則として30日前の解雇予告を行うか、解雇予告手当と呼ばれる金銭を支払うことが、労働基準法によって定められています。
解雇理由・解雇条件としては、以下のようなものが考えられます。
・能力不足
・協調性の欠落
・度重なる欠勤
・精神的な不調
これらの理由の正当性については個別的に判断され、調査不足や他の社員との不平等なども認められず、合理的と考えられた場合にのみ解雇が認められることになります。
●懲戒解雇における解雇理由・解雇条件
懲戒解雇とは、使用者が従業員の企業秩序違反行為に対して課す懲戒処分のうち、もっとも重いものを指します。
つまり、従業員が企業秩序に反する行動を取った場合に与えられる罰としての解雇のことを指します。
この場合、従業員は企業秩序への違反という重大な責めに帰すべき行為があること、またその制裁としての効果から、使用者は従業員を即日解雇することができます。この点が普通解雇との大きな違いです。
懲戒解雇を行う際には、所轄労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受ける必要があることに注意が必要です。
解雇理由・解雇条件としては、以下のようなものが考えられます。
・職務怠慢
・素行不良
・業務内外における犯罪行為
●整理解雇における解雇理由・解雇条件
整理解雇は、普通解雇の1類型として数えられます。
もっとも通常のそれとは違い、使用者側の能力不足などを理由としたものではなく、会社側における経営不振などを理由とする、人員削減を目的とした解雇のことを整理解雇と呼びます。
この場合、会社側の都合による解雇になりますから、他の二種類の解雇に比べて、より厳格な制約が課されています。
解雇理由・解雇条件としては、以下のようなものが考えられます。
・経営不振等による人員削減の必要性
■解雇理由の通知
解雇理由が正当と認められた場合、会社は当該従業員に解雇理由を通知する法律上の義務を負います。
解雇理由は、解雇理由証明書によって行うことになります。これは前もって発行したり、解雇と同時に必ず交付したりする必要はないのですが、解雇を受けた従業員からの請求があった場合には必ず交付する必要があります。
請求を無視し、交付を行わなかった場合には、罰金も予定されているため注意が必要です。
また、解雇理由証明書には、従業員の請求した事項だけしか記載することができません。従業員が再就職等を行う際に、新しい職場に証明書を提出することが考えられます。その時に不利益を受けないよう、不要な記載はすることができなくなっています。
従業員が解雇の事実のみの記載を求めた場合には、一切の解雇理由を記載することができないことになります。
労働者は法律による強い保護を受けているため、その解雇は難しいものとなっています。したがって会社としては、解雇できる場合か否かわからない場合も少なくありません。
勤務態度の改善や退職を勧めるなどの対策を続けるほうが有効な場合も考えられます。
こういったお悩みをお持ちの場合、弁護士への相談をお勧めしています。
オリンピア法律事務所は、名古屋市を中心に、愛知県全域にお住いの皆様から、使用者側の労務問題、企業法務、債権回収・損害賠償など、幅広い分野にかかるご相談を承っております。お困りのことがございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。最適な解決方法をご提案させていただきます。
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弁護士紹介
原 武之Takeyuki Hara
弁護士登録後から労務問題と倒産問題を中心に扱ってきましたが、どんな時にも意識するのは、受動的に対応するのではなく、主体的に積極的に対応していくことであると思っています。
問題が発生してから動くのではなく、問題発生を予見し、依頼者の方が目指す方向に向けて解決策をどこまで提示することができるか、それを常に自問して業務を行っています。
- 所属
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- 愛知県弁護士会
- 経歴
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- 兵庫県西宮市出身
- 兵庫県私立滝川高校卒業
- 平成12年 早稲田大学法学部卒業
- 平成15年 弁護士登録(56期 第二東京弁護士会)
- 森・濱田松本法律事務所入所
- 平成18年 川上法律事務所移籍独立(愛知県弁護士会に登録換え)
- 平成21年 川上・原法律事務所に名称変更
- 平成29年2月 オリンピア法律事務所 パートナー
事務所概要
弁護士 | 原 武之(はら たけゆき) |
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