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従業員の自主的なサービス残業|会社が罰せられる可能性はある?

労働基準法119条には、「次の各号のいずれかに該当する者は、6箇月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。」と定められており、その各号の中には、第32条の「労働時間」、第37条の「時間外労働の割増賃金」に関する規定が含まれています。

 

すなわち、法定時間外の労働と、これに対して割増賃金を支払わないことは原則として違法であり、6か月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金刑に処されることとなります。

 

では、従業員が自主的に行うサービス残業を行っていた場合で、会社が罰せられる可能性はあるのでしょうか。

 

このページでは、従業員の自主的なサービス残業で会社が罰せられる可能性についてご紹介します。

従業員の自主的なサービス残業で会社が罰せられる可能性

労働時間に該当するものとしては、端的には、指揮監督下に置かれた状態で労働をしていることが求められます。

これは、所定労働時間内・外、法定労働時間内・外に関係なく、労働時間とされ、当該労働時間に対しては賃金を支払う必要があります。

ことさら、法定労働時間外の労働に対しては割増賃金を支払う必要があることは上述の通りです。

 

例えば、上司が、残業を強要した場合はもちろんのこと、従業員が残業しなければ終わらないような量の仕事を与え、明示的あるいは黙示的に業務に関する指示があった場合には、従業員が形式的には自主的なサービス残業を行っているように見えても、違法なサービス残業となってしまいます。

 

すなわち、自主的なサービス残業であっても違法とされる可能性が高いといえます。

 

これに対しては、違法なサービス残業に当たらないケースとして以下のものが挙げられます。

 

① 管理監督者に該当する場合

管理監督者に該当するものは、法定時間外労働に対する保護を与える必要性に乏しく、また、法定時間制になじまない役職であるため、賃金の支払いが求められることはもちろんですが、割増賃金の支払いの必要がありません。

 

管理監督者に該当するためには、経営者と一体性を有しており、重役出勤が認められており、労働に対する対価が高額であることが求められます。

 

また、

② 裁量労働制

③ 高度プロフェッショナル制度

④ 変形労働時間制

のいずれかを採用しており、これに該当する労働者であれば、法定労働時間である1日8時間を超えても違法となりません。

 

多様化する働き方に対応するものであり、労働時間の管理が難しいものや、管理することが適切でない業種、従業員である場合に採用していることが多いといえます。

 

なお、36協定(「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、厚生労働省令で定めるところによりこれを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。」労働基準法36条)がある場合には、割増賃金を支払うことで、違法なサービス残業と判断されません。

 

固定で残業代を支払っている場合には、残業代であることが明確に区別されており、法定の割増賃金を上回っている場合には、その限りでは残業代の支払いがあるものと判断されます。

労働・労務問題にお困りの方はオリンピア法律事務所までご相談ください

以上のように、従業員の自主的なサービス残業であっても、会社の明示・黙示の指示下で行われている業務は当然労働時間にあたるため、36協定の締結など、法定労働時間を超えて労働することを適法とする手だてが求められます。

また、労働時間であることには変わりがないため、割増賃金を支払うことが求められます。

ご不明点があれば、弁護士に相談することをお勧めします。

 

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原 武之Takeyuki Hara

弁護士登録後から労務問題と倒産問題を中心に扱ってきましたが、どんな時にも意識するのは、受動的に対応するのではなく、主体的に積極的に対応していくことであると思っています。

問題が発生してから動くのではなく、問題発生を予見し、依頼者の方が目指す方向に向けて解決策をどこまで提示することができるか、それを常に自問して業務を行っています。

所属
  • 愛知県弁護士会
経歴
  • 兵庫県西宮市出身
  • 兵庫県私立滝川高校卒業
  • 平成12年 早稲田大学法学部卒業
  • 平成15年 弁護士登録(56期 第二東京弁護士会)
  • 森・濱田松本法律事務所入所
  • 平成18年 川上法律事務所移籍独立(愛知県弁護士会に登録換え)
  • 平成21年 川上・原法律事務所に名称変更
  • 平成29年2月 オリンピア法律事務所 パートナー

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