懲戒解雇における不当解雇
懲戒解雇は正当な理由がなければ行うことができません。懲戒解雇の理由には、業務上横領、業務命令拒否、無断欠勤、ハラスメント、経歴詐称などがあります。これらの理由に該当しない懲戒解雇は不当解雇に当たるおそれがあります。
また、懲戒解雇は6つの原則を満たさなければ、不当解雇に当たるおそれがあります。
(1)正当性の原則
就業規則にて懲戒解雇の規定や該当事由が定められていたとしても、その規定が社会的正当性を有していなければ、不当解雇となってしまいます。
例えば、遅刻や欠勤をした者は懲戒解雇に処する、といったような規定はあまりに重い処置であることから社会的正当性を有していないと解され、不当解雇にあたります。
(2)平等待遇の原則
複数人を同じ懲戒解雇事由によって懲戒解雇などの処罰を行う場合であっても、その処罰内容を変えてはいけません。例えば、同じ事由なのにある人は減給や謹慎処分、一方で別の人は懲戒解雇など異なる待遇によって懲戒解雇をおこなった場合は不当解雇にあたります。
(3)二重処罰の禁止の原則(一事不再理)
二重処罰とは、1つの問題に対して複数の処罰を行うことです。懲戒解雇においては他の処罰と合わせて懲戒解雇処分を行った場合、不当解雇となります。
(4)不遡及の原則
遡及とは、過去にさかのぼって影響を及ぼすことです。つまり不遡及の原則は、過去にさかのぼって懲戒解雇の処罰を行うことを禁止したものです。
たとえば、就業規則に懲戒解雇の規程が定められる前の行動に対して、懲戒解雇を言い渡すことはできません。不遡及の原則は、一般の法解釈にも用いられている原則ですので、当然、懲戒解雇についても適用されます。
(5)個人責任の原則
懲戒解雇はあくまで、個々の労働者の行動に関する制裁でなければなりません。
従って、懲戒解雇の対象となる労働者が関与していない行為を理由とした懲戒解雇や、組織として連帯して責任を負うことを理由とした懲戒解雇などは認められません。
(6)適正手続の原則
公正な手続きに則っていない懲戒解雇は認められません。そのため、懲戒解雇に際する公正な手続きを事前に明確にし、労働者や労働組合に対して周知しておくことが重要です。
たとえば、就業規則に次のような事項を定めることが求められます。
①懲戒委員会を開催し、協議した上で懲戒解雇を決定する
②懲戒解雇の根拠を証拠を提示した上で明確にした後に懲戒解雇を決定する
③懲戒解雇処分に不服がある場合には、公正に検討する。また、労働者はこれに対して弁明を行うことができる。
こういった規則を定め、事前に周知しておかなければ、解雇権の濫用にあたり、懲戒解雇処分が無効となるおそれがあります。
オリンピア法律事務所は、名古屋市を中心に、愛知県全域の皆様から、懲戒解雇など使用者側の労務問題、企業法務、債権回収・損害賠償など、幅広い分野のご相談を承っております。お困りのことがございましたら、当事務所までご相談ください。最適な解決方法をご提案させていただきます。
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弁護士紹介
原 武之Takeyuki Hara
弁護士登録後から労務問題と倒産問題を中心に扱ってきましたが、どんな時にも意識するのは、受動的に対応するのではなく、主体的に積極的に対応していくことであると思っています。
問題が発生してから動くのではなく、問題発生を予見し、依頼者の方が目指す方向に向けて解決策をどこまで提示することができるか、それを常に自問して業務を行っています。
- 所属
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- 愛知県弁護士会
- 経歴
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- 兵庫県西宮市出身
- 兵庫県私立滝川高校卒業
- 平成12年 早稲田大学法学部卒業
- 平成15年 弁護士登録(56期 第二東京弁護士会)
- 森・濱田松本法律事務所入所
- 平成18年 川上法律事務所移籍独立(愛知県弁護士会に登録換え)
- 平成21年 川上・原法律事務所に名称変更
- 平成29年2月 オリンピア法律事務所 パートナー
事務所概要
弁護士 | 原 武之(はら たけゆき) |
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