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【過労死ライン】残業時間の上限の目安と企業がすべきこととは

長時間労働による健康被害が社会問題となり、「過労死ライン」という言葉を耳にする機会が増えました。

企業には、労働基準法に基づく残業時間の上限を守るだけでなく、社員の心身の状態を日常的に把握し、過労を未然に防ぐ責任があります。

今回は、過労死ラインの具体的な基準や、企業が講ずべき防止策を解説いたします。

過労死ラインとは

過労死ラインとは、長時間労働によって健康を損なう危険性が著しく高まる残業時間の目安です。

厚生労働省が労災認定の判断基準として定めており、月100時間以上の残業、または26か月の平均で月80時間を超える残業が続く場合、業務と死亡との因果関係が強いとみなされます。

一般的には月80時間が過労死ラインと呼ばれ、これを超えると健康障害のリスクが一気に上昇します。

過労死の主な原因は、脳・心臓疾患や、過度な心理的負荷による過労自殺などです。

特に連続的な長時間労働や夜勤、不規則勤務はリスクを高める要因となります。

労働基準法で定められた残業時間の上限

過労死ラインとは別に、企業が必ず守らなければならない法的な上限があります。

36協定がない場合

36協定とは、労働基準法36条に基づく労使協定で、法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合に必要です。

36協定を締結していない企業は、そもそも労働者に対して残業をさせたり、休日労働を命じたりすることができません。

36協定を締結している場合の上限

36協定を結んでいても、月45時間・年360時間が上限となります。

繁忙期など例外的な場合に限り、以下の上限まで延長できます。

 

  • 720時間以内
  • 単月100時間未満
  • 複数月平均で80時間以内
  • 45時間超は年6回まで

 

上記の規制に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意が必要です。

労災認定されれば高額な損害賠償責任が発生する場合もあり、企業名公表によるイメージ失墜にもつながります。

過労死ラインを超えそうなときの対策

企業側が取るべき対策としては、以下が挙げられます。

 

  • 適切な36協定の締結
  • 残業時間の削減
  • 業務量の適正化と人員配置の見直し
  • 特定社員に業務が集中していないかを定期的にチェック
  • 健康管理と面談の実施
  • 組織文化の改革
  • 就業規則・雇用契約の整備

 

残業の上限や運用ルールを明文化し、コンプライアンス体制を強化しましょう。

まとめ

過労死ラインの「月80時間」は、命と健康を守るための重要な基準です。

企業は法定上限を守るだけでなく、残業時間が増加傾向にある従業員を早期に把握し、業務量の調整や休養の確保を行う義務があります。

企業が長時間労働を放置すれば、従業員の健康を損なうだけでなく、労災認定や損害賠償、企業イメージの失墜といった深刻な事態につながりかねません。

自社の労働環境に不安がある、あるいは長時間労働の是正に行き詰まっている場合には、労働問題に詳しい弁護士に早めに相談することをおすすめします。

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原 武之Takeyuki Hara

弁護士登録後から労務問題と倒産問題を中心に扱ってきましたが、どんな時にも意識するのは、受動的に対応するのではなく、主体的に積極的に対応していくことであると思っています。

問題が発生してから動くのではなく、問題発生を予見し、依頼者の方が目指す方向に向けて解決策をどこまで提示することができるか、それを常に自問して業務を行っています。

所属
  • 愛知県弁護士会
経歴
  • 兵庫県西宮市出身
  • 兵庫県私立滝川高校卒業
  • 平成12年 早稲田大学法学部卒業
  • 平成15年 弁護士登録(56期 第二東京弁護士会)
  • 森・濱田松本法律事務所入所
  • 平成18年 川上法律事務所移籍独立(愛知県弁護士会に登録換え)
  • 平成21年 川上・原法律事務所に名称変更
  • 平成29年2月 オリンピア法律事務所 パートナー

事務所概要

弁護士 原 武之(はら たけゆき)
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