会社側がとるべきパワハラ防止策とは?具体的な対策を解説
■パワーハラスメント(パワハラ)とは
パワーハラスメント(パワハラ)とは、主に会社での地位の差を利用したいじめや嫌がらせのことで、上司から部下への嫌がらせなどがこれにあたります。
パワハラの定義は広義にわたりますが、厚生労働省は次の①~③のすべてを充たす言動を職場のパワハラと定義しています。
①職場における優越的な関係を背景とするものである
②業務上必要かつ相当な範囲を超えている
③労働者の就労環境を害するものである
このようなハラスメントを放置しておくと、従業員による仕事の能率が下がってしまう、従業員から訴えられ損害賠償請求をされてしまうなどのリスクが考えられます。
また、ハラスメントがあった事実を公表されてしまい、会社の信用が落ちてしまうということも考えられます。
さらには、2020年にはパワハラについての対策を定める労働施策総合推進法が施行され、企業には雇用管理上の措置が求められるなど、パワハラに対する取締りはますます厳しくなっているといえます。
そのため、パワハラは放置せずに早急に対処することが求められます。
■パワハラの防止策
それでは、パワハラの具体的な防止策としてはどのようなものが考えられるでしょうか。
先述した労働施策総合推進法において要求されている防止策としては、以下のようなものが挙げられます。
●方針の策定および労働者への周知・啓発
会社は、ハラスメントを禁止する方針を策定したうえで労働者に周知し、啓発することが必要になります。
例えば、どのような行動がハラスメントにあたるのかを就業規則等に列挙し、それらを禁止すると明言することで、労働者はどのようなことを行ってはならないのかが明確に理解できるようになります。
また、社内研修の中へハラスメントに関する事項を盛り込むことで、労働者への周知を徹底することも考えられます。
また、パワハラを根本的に防止するためには形式的に規則を定めるだけでは足りず、労働者の人権意識を実質的に高めることが必要となります。
●ハラスメントを行った者への対処方針の策定・啓発
ハラスメント行為者に対しては、厳しい罰則を設ける旨の方針およびその内容を定め、労働者に対して周知・啓発することもパワハラの防止には有効です。
罰則や懲戒処分によって、パワハラの禁止をより実効的なものにする効果があります。
例えば、就業規則等の書面に、ハラスメントにあたる行動があった場合は懲戒処分を受けることになる旨を明記することで、対処方針の策定および労働者への周知を行うという方法が想定されます。
●相談窓口を設置する
実際にハラスメントが起こってしまった時のため、またハラスメントの防止を実効的なものにするため、相談窓口の設置も必要となります。
また、ハラスメントかどうかわからない場合にも相談できる体制を整えておくことで、ハラスメントを未然に防いだり重大なものになることを防いだりすることができます。
この際には、相談を受ける担当者を定めたり、外部機関に委託して窓口を設立したりするといった方法が考えられます。
■パワハラが発生してしまったら
それでは、これらの防止策を行ってもなおパワハラの発生を防ぐことができなかった場合にはどうすればよいのでしょうか。
このような場合には、どのような措置を行うか確定するためにも、まずは事実関係の確認を行うことが重要です。
事実関係の確認は従業員等に聞き込みを行う等してすることになると考えられますが、実態を漏らしてしまったために後でその従業員がハラスメントの対象になって被害が拡大することも考えられます。
そのため、事実関係を確認する際には、その協力を理由とした不利益取り扱いを禁止する旨を社内で定め、周知することが必要になります。
確認が済んだら、判明した事案に応じた適切な措置を、被害者および行為者双方に対して行うことになります。主には被害者を保護した上で行為者の懲戒を行ったり、双方の部署を引き離したりすることが考えられます。
この際、双方のプライバシーを保護することが重要になってきます。
また、パワハラが発生してしまった場合には、適切な再発防止措置を講ずることも必要になってきます。
パワハラ等の労働問題には、様々な問題がつきまといます。また、会社の中で問題がもみ消されてしまったり、立場の差によって相談がしにくい環境にあったりすることも考えられます。このような場合、弁護士への相談をお勧めしています。
オリンピア法律事務所は、名古屋市を中心に、愛知県全域にお住いの皆様から、使用者側の労務問題、企業法務、債権回収・損害賠償など、幅広い分野にかかるご相談を承っております。お困りのことがございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。最適な解決方法をご提案させていただきます。
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弁護士紹介
原 武之Takeyuki Hara
弁護士登録後から労務問題と倒産問題を中心に扱ってきましたが、どんな時にも意識するのは、受動的に対応するのではなく、主体的に積極的に対応していくことであると思っています。
問題が発生してから動くのではなく、問題発生を予見し、依頼者の方が目指す方向に向けて解決策をどこまで提示することができるか、それを常に自問して業務を行っています。
- 所属
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- 愛知県弁護士会
- 経歴
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- 兵庫県西宮市出身
- 兵庫県私立滝川高校卒業
- 平成12年 早稲田大学法学部卒業
- 平成15年 弁護士登録(56期 第二東京弁護士会)
- 森・濱田松本法律事務所入所
- 平成18年 川上法律事務所移籍独立(愛知県弁護士会に登録換え)
- 平成21年 川上・原法律事務所に名称変更
- 平成29年2月 オリンピア法律事務所 パートナー
事務所概要
弁護士 | 原 武之(はら たけゆき) |
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